介護、子育てのいかんせん

介護、子育てで起きる様々ないかんせんな事に対する必勝法を書き留めます。

ご飯屋さんのS様

以前働いていたデイサービスでの出来事です。

S様は、アルツハイマー認知症で、傾眠がちに過ごされていました。

時折ふと目が覚めると、ここがどこかわからずにオロオロされて、「家に帰る。」と玄関から外に出ようとされます。その時も食事のために寝ているS様を起こした際に慌てて玄関に向かって靴を履こうとされました。

S様の家はレストランをされていて今は息子さんが継いでいますが、元気な時は朝早くから、下ごしらえを手伝っていたそうです。S様の両足には静脈瘤があり、忙しく働いてきた方なんだなぁと思いました。

認知症の利用者様が不穏になっている時は、なかなかこちらの話を聞いてもらえません、玄関から出て行こうとするS様をあの手この手で引き止めていた時に、「Sさんご飯食べましょう、今までたくさんの人のご飯作ってきたんでしょう、お腹一杯にしてあげたんでしょう、今度はSさんが食べる番ですよ。」と言いました。すると、「うまいこと言うね。」と言い食事の席についてくれました。

その他にも、「おいしいですよ。」などなど色々な言葉をかけていましたが、心に響かなかったようです。言葉を失いつつある認知症の方には特にその方の記憶に残っている言葉を探す事が大切なんだと気付いた出来事でした。

必勝キーワードを探し始めるきっかけになりました。

怒りん坊のY様

とても生真面目で、適当なことが嫌いな印象のY様(男性)

彼は認知症見当識も強く、一日中彼なりのオリジナルストーリーと現実をリンクさせながら過ごされています。短期記憶障害はかなり強く、どんな人生を歩んできたのかを垣間見る事ができないのが口惜しいのです。

私の勤めているデイサービスでは、午後から1時間くらい集団レクリエーションとしてゲームをします。しかしY様は、ゲームのルールだけでなくなぜやるのかも理解できないようで、しばしば怒り出します。「俺はやらないぞ!どういう事だ、こんな事して駄目だぞ!」

和やかに展開したいレクタイムに、一人憤慨する方がいると、現場は大変です。

常識に訴える事ができない認知症の方の怒りを鎮めるために、私は日々それぞれの利用者様の癖とキーワードを探すようにしています。

Y様の場合、怒りの裏にゲームを理解できない事に対する不安感があると思いました。私は隣に座り「気に入らなければゲームしなくて良いですよ、何が駄目ですか?」と聞きました。Y様は、「こんなわけわからん事やったら駄目だろう!大変な事になるぞ!」とおっしゃいました。私は「大変な事になったら困りますね、では参加しないで見ていてください。Y様のようにいつもきちっとされている方には嫌かもしれませんね、いつもきちっとされているY様を私も見習わなければいけませんね。」などと隣で声かけをしました。Y様は大声を出すのはやめて輪のなかで最後まで穏やかに過ごされました。

本来真面目で実直であろうY様の必勝キーワードは「きちっと」だったような気がします。不安を取り除くにはキーワードを褒め言葉に乗せて届けると相手の心に響きやすいのではないかと、感じたケースでした。